妄想歌詞評・星野源「恋」(2018年1月「ふらんす」に寄稿)
てっきり〈恋をしたのあなたの 指の股に 頬の香り〉だとばかり思いこんでいたのでした。はい、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌「恋」の話です。正しい歌詞は〈指の混ざり〉なんですが、ダメ女視点に立った「布団」や、営業マンのつらい心境を歌った「営業」、お墓参りソング「ステップ」、お通夜の歌「未来」など、数々のユニークな楽曲を創作してきた星野源なので、「さすがだなあ。指の股ときたか。ここに目をつけて恋に落ちるとはエロい男だなあ」と感心してしまったわけで。
わたくし、前々から、星野源の作詞力には並々ならぬ敬意を寄せておりましたの。ものの見方が個性的で、それを表現する際の一文の中に特殊な単語を挿入する角度が独特で、言葉の選び方自体がクリシェとは無縁。そんな源ちゃんの歌詞たちは、不思議な感触を残しつつも、たいていの場合、軽やかで朗らかで前向きだから大勢の人の胸の奥深いところに、すーっとしみこんでいく。
歌に限らず、小説だって何だって、個性が際立つ作品というものは、一部の熱狂的なファンがついても、爆発的に売れたりはしないものです。ところが源ちゃんの楽曲は大ヒットしているわけです。個性と人気が高いレベルで合致している。そんな作り手はめったにいるもんじゃありません。その意味で、ちっちゃくて醤油顔で、ひとを油断させる外見ですけど、星野源は端倪すべからざる逸材というべきでありましょう。