KERA・MAP『キネマと恋人』劇評
2016年に世田谷パブリックシアターで上演された舞台の劇評を『悲劇喜劇』(早川書房)に寄稿したものです。
豊﨑由美
2026.07.30
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客電が消えた闇の中、カタカタカタという映写機の音が聞こえ、舞台上にはチャップリン、マルクス兄弟、バスター・キートンらのコメディ映画のハイライトシーンをつなげたフィルムが映し出される。やがて、それらの映像に朗らかな笑い声がかぶり、映画館の客席が出現する。明るくなっても席を立とうとしない、緒川たまき演じるところのハルコ。
そんなシーンから滑り出すケラリーノ・サンドロヴィッチ脚本・演出による『キネマと恋人』は、失業中の夫を抱えたヒロインが、惨めな生活と愛なき結婚から逃れるために映画館に通い、スクリーンから飛び出してきたキャラクターと、それを演じる俳優二人に愛されるものの──というウディ・アレン監督の映画『カイロの紫のバラ』のストーリーを踏襲しながら本家超えを果たした、可笑しくて淋しくて、可笑しくて感動的で、可笑しくて泣ける、素晴らしい、素晴らしい素晴らしいステージになっている。