吉村萬壱『臣女』(徳間文庫)書評(2015年1月記 寄稿先不明)

奇想天外な介護小説が、最終章で純度の高い命がけのラブストーリーへと転じるアクロバティックな展開が素晴らしい。
豊﨑由美 2026.08.07
読者限定

 3メートル超→3メートル42センチ→4メートル→4メートル35センチ→4メートル68センチ→5メートル超。これ、何の数値だと思います? 今年も厳しい北国の積雪量じゃありません。もともと150センチしかなかった妻の身長の推移なんです。

 東日本大地震後にそこかしこで生まれた、同調圧力の不気味さを描いて話題を呼んだ『ボラード病』の作者・吉村萬壱の最新作『臣女』は、骨の成長が止まらず巨大化していく妻・奈緒美の世話に明け暮れする夫〈私〉を語り手にした書き下ろし小説だ。でも、ひとくちに世話といったって容易なことじゃない。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、679文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
ハン・ガン『ギリシャ語の時間』(晶文社)の書評(2017年12月「週刊...
読者限定
妄想歌詞評・中島みゆき「わかれうた」(2017年10月「ふらんす」に寄...
読者限定
ジャック・ロンドン『犬物語』(柴田元幸編訳 スイッチパブリッシング 2...
読者限定
池上永一『黙示録』(角川文庫)解説 2017年4月
読者限定
妄想歌詞評 スピッツ(2017年7月「ふらんす」に寄稿)
読者限定
妄想歌詞評 キリンジ「エイリアンズ」(2017年4月 「ふらんす」に寄...
読者限定
野田秀樹『エッグ/MIWA』(新潮社)書評(2015年1月「新潮」に寄...
読者限定
KERA・MAP『キネマと恋人』劇評