ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは悪夢』(河出文庫)

不穏で不安で不埒で不吉。取り扱い要注意の札をつけたい、これは世界の悪意に免疫のない人には毒にもなりかねない危険な一冊(2013年4月に「読書人」に寄稿)
豊﨑由美 2026.05.10
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 心安らぐ勧善懲悪の展開や、心癒やされるハッピーエンディングに徹する“お話”に背を向け、「在るものは、在るのだからしかたない」とばかりに狂気と暴力を容赦なく突きつけ、自分の身近にそんなものはないと思いたがっている読者の顔を恐怖と嫌悪でゆがませる。それが、ジョイス・キャロル・オーツという作家の仕事だ。オーツ作品の多くは、人間精神のダークサイドと、それゆえに生じる暴力行為や狂気の沙汰を描いて剣呑なのである。一九九六年から二○一一年に発表された中短篇から作者本人がセレクトした作品を七篇収めた『とうもろこしの乙女、あるいは悪夢』もまた然り。タイトルそのままに、読むと悪夢にうなされかねないJ・C・オーツ的世界を堪能できる一冊になっているのだ。

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