ミシェル・ウエルベック『地図と領土』(ちくま文庫)書評

21世紀後半の想像力をもって今ここにある危機を描くというザ・全体小説の傑作。(2014年1月、「本の雑誌」に寄稿)
豊﨑由美 2026.05.27
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SF的想像力を駆使して、人類の今ここにある危機を描いた『素粒子』(ちくま文庫)で知られる作家ミシェル・ウエルベックに、ついにゴンクール賞を戴冠させた『地図と領土』は、〈私は世界を説明したい〉と渇望したアーティストの一生を描いた小説になっている。

 主人公は1976年、建築会社の社長をしている父と美しい母の間に生を受けたジェド・マルタン。幼い頃から一人で絵を描くのを好んでいた彼は、パリの美術学校に入って写真を志す。そして、〈産業時代に人間が作り出した製品の網羅的なカタログを編纂したいという〉〈百科全書的野心〉に突き動かされ、書類ファイルや拳銃、プリンタのインクカートリッジなどの写真を撮るところからキャリアをスタートさせる。

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