AKB48の握手会——右手のヴァージンを捧げてきたよ

2011年11月に、北尾トロさんが発行している雑誌「レポ」向けに書いた記事です。連載のテーマは「初体験」でした。
豊﨑由美 2026.01.04
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 連載第三回で経験したバンジージャンプのトラウマで一回お休みをいただいてしまったトヨザキです。「お元気ですか。そして、今でも愛しているといってくださいますか」。

 キモいですか、そうですか。これは昭和のアイドル、あべ静江のヒット曲「みずいろの手紙」からの引用なんですの。阿久悠作詞・三木たかし作曲の昭和歌謡の名曲なんだすわね、だすわよ。

 まあ、アイドルといっても、あべ静江はオヤジどもの人気を集めるアダルト系のそれなんでして、わたしが小学生の頃の昭和四十年代はなんたって天地真理、南沙織(そこに小柳ルミ子を加え、「新三人娘」と呼ばれていましたが、子供心に「ルミ子はちがうだろう、ルミ子は」という違和感を覚えていたものです)。その後、麻丘めぐみ、アグネス・チャン、浅田美代子、桜田淳子、山口百恵、森昌子が出てくるわけですが、しかし、アイドルの歴史は当然もっと過去にさかのぼれるのでした。たとえば、ジャニーズ事務所でいえば、あおい輝彦(アニメ版『あしたのジョー』の声の人ですよ)、フォーリーブス(「♪ボクから逃げようったってダメだよ 逃げれば逃げるほどボクに近づくってわけ だって地球は丸いんだもん!」という壮大なストーカーソング「地球はひとつ」で知られる、一九七○年代の嵐的アイドルグループです)。

 むろん、トヨザキにも過去好きなアイドルはおりました。森新一、水原ひろし、加山雄三、アグネス・チャン、田原俊彦、松田聖子。とはいえ、社会人になってからは見つけておりませんし、わざわざコンサートに行ったり、出演番組を全部チェックしたり、レコードをすべて買ったりという熱いヲタ魂を宿したことは、生まれてこのかた五十年間ありません。もちろん、アイドルと握手をしたこともなく、いうなれば、わたくしの右手はハンドシェイクヴァージン。せっかくの右手を処女のままにしておくのももったいないな、というわけで、安易ですがAKB48の握手会に行ってみようかと思ったんですの。

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