青木淳悟『男一代之改革』(河出書房新社)書評

アニメ映画で高らかに謳い上げられる「ありのままに」とは次元がちがう異様な「ありのままに」を露呈する剣呑な小説家が青木淳悟なのである。(2014年6月に「文藝」に寄稿)
豊﨑由美 2026.04.14
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 ディズニーアニメ『アナと雪の女王』が大ヒットして、巷に流れる挿入歌「Let It Go」を頭の中がぐわんぐわんするほど聴かされたからというわけでもないのだが、わたしは今、青木淳悟のことを「ありのままに作家」と呼びたい誘惑に駆られている。

 それは、実在する本を下敷きに書かれた『私のいない高校』が念頭にあるのはもちろんなのだが、家という小社会における母親を徹底観察&考察した「いい子は家で」や、不動産を購入することにまつわるあれこれをつぶさに描いた「このあいだ東京でね」にしても、事物や事象を「ありのままに」描き立てようとする姿勢は異様という他ない。で、アニメ映画では自己発見&自己肯定という文脈で謳い上げられていた「ありのままに」が、青木淳悟の筆にかかると、なにかこう、居心地が悪いというか、奇妙というか、わたしの考える「ありのままに」のレベルには収まりきらない何かに変容してしまうのである。

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