劇評 平田オリザ作・演出『転校生』

“高校生程度”に真面目に対峙したゆえに獲得した共感の眼差し。(「TV Taro」1995年1月号掲載)
豊﨑由美 2025.11.06
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 高校生程度にバカで、高校生程度に恥知らずで、高校生程度に傷つきやすく、高校生程度に発育していて、高校生程度に傲慢で、高校生程度に自信がなく、高校生程度にもったいぶって、高校生程度に立ち直りが早い。

 女子高生という名称でひと括りにされて、毀誉褒貶はなはだしく、男どもからは性の対象として見られても、知性の対象としては鼻もひっかけられない。いつの時代も15~18歳の女子といえば四六時中そんな程度にあしらわれており、自分が自分でないようなフワフワした気持ちを抱えているのでした。

 そういう周囲の容赦ないっちゃあ容赦ない視線に傷つけられたお返しとばかりに、神経症にかかって太ったり痩せたり、鋭い言葉の切っ先で大人の弱みにつけこんだり、スケベオヤジから金をふんだくる。現代に生きる15~18歳の女子はそれぞれのスタイルで、孤立無援の闘争を行っているわけで、何も尾崎豊みたいなやり方だけが外部(他者)との闘いではないのよ、そういうこと。

 青山演劇フェスティバルの今年(1994年)のテーマは女子高生。その中でも現実の女子高生が出演した『転校生』を興味深く観せていただきました。

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