ウラジーミル・ソローキン『青い脂』(河出書房新社)

ロシア文学界お歴々7体のパスティーシュが見事なケッサク歴史改変SF
豊﨑由美 2025.09.08
読者限定

〈私の重たい坊や、優しいごろつきくん、神々しく忌わしいトップ=ディレクトよ。お前のことを思い出すのは地獄の苦しみだ、リプス・老外(よそ者)、それは文字通り重いのだ〉。二○六八年、雪に閉ざされた東シベリアの遺伝子研18という施設で、ある実験にたずさわっている言語促進学者ボリス・グルーゲルが、若い彼氏に向けて書く手紙からはじまるソローキンの『青い脂』には、現代文学に親しんでいるつわもの読者でもぎょっとするにちがいない。だって、言葉がわかんないんだもん。ボリスが連発する〈リプス〉ってなに? なんで、しょっちゅう中国語らしき単語が入ってくるの? 〈ピンクの前立腺をしたアルビノ=モグラ〉ってどんな比喩だよ、などなどなどなど。

 でも、リプス・大丈夫。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、1149文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
妄想歌詞評・星野源「恋」(2018年1月「ふらんす」に寄稿)
読者限定
ハン・ガン『ギリシャ語の時間』(晶文社)の書評(2017年12月「週刊...
読者限定
妄想歌詞評・中島みゆき「わかれうた」(2017年10月「ふらんす」に寄...
読者限定
ジャック・ロンドン『犬物語』(柴田元幸編訳 スイッチパブリッシング 2...
読者限定
池上永一『黙示録』(角川文庫)解説 2017年4月
読者限定
妄想歌詞評 スピッツ(2017年7月「ふらんす」に寄稿)
読者限定
妄想歌詞評 キリンジ「エイリアンズ」(2017年4月 「ふらんす」に寄...
読者限定
野田秀樹『エッグ/MIWA』(新潮社)書評(2015年1月「新潮」に寄...