小田雅久仁『本にだって雄と雌があります』(新潮文庫)

「飛ぶ幻書」にまつわるコミカルにしてエモい傑作ファンタジー。
本好きの胸を衝いて震わせて揺さぶりまくり!
(2012年11月「本の雑誌」に寄稿)
豊﨑由美 2025.09.17
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今年(2012年)の夏、紀伊國屋書店新宿本店で、本の出だしだけ見せ、タイトルも著者名も伏せたまま販売する「ほんのまくらフェア」が開催されて好評を博したけれど、その折に刊行が間に合い出品されていたなら確実に売上げ一位だったに相違ないのが、これだ。

〈あんまり知られてはおらんが、書物にも雄と雌がある。であるからには理の当然、人目を忍んで逢瀬を重ね、ときには書物の身空でページをからめて房事にも励もうし、果ては跡継ぎをもこしらえる〉

 発言主は、大正三年生まれの稀代の愛書家・深井與次郎。その言葉を、幼い息子に伝えるために書き記しているのは與次郎の孫〈私〉。二○○九年、悪意と創意の塊ともいうべき異形の問題作『増大派に告ぐ』でファンタジーノベル大賞を受賞した小田雅久仁の、待望の待望の待望の二作目『本にだって雄と雌があります』は、本棚で産声をあげるや、南を目指してばさばさ飛び去るという〈幻書〉にまつわる物語だ。

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