佐藤亜紀『金の仔牛』(講談社)

癖が強めの登場人物らが欺し欺されのコン・ゲームを展開。
18世紀を舞台にしながら日本のバブル期という狂騒をエレガントに風刺する、絶品の歴史小説にして経済小説。
歴史や経済に疎くたって大丈夫。トヨザキが楽しめたくらいなので、大丈夫!
豊﨑由美 2025.09.28
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 さて、ここにひとりの二十歳そこそこの青年がおります。食うに困って追い剥ぎなんぞをしておりますが、一七一九年五月のとある朝、彼の運命のチャリオットは裏街道から華やかなサクセスロードへと方向転換。襲った馬車にいた投資家の賢老人に見込まれ、株の相場師になるや、あれよあれよという間に財を築いたばかりか、かたわらに見目麗しい恋人まで寄り添うといういいご身分に。ところが、その恋人に懸想してきたのが、青髭公も真っ青の変態鬼畜公爵。おまけに恋人の父親は、泣く子も黙る裏街道家業の親方です。一人娘を元追い剥ぎに嫁がせるのが不愉快でならない親方は、公爵の邪気を利用して青年を破滅させようと一計を案じるのですが──。

 聡明で気持ちのいい青年が一文無しから成り上がり、その過程で海千山千のくせ者たちと丁々発止。騙し騙されのコンゲームを、知恵をふりしぼって泳ぎ抜く。そんな痛快至極の物語が好きな方に、熱烈推薦するのが佐藤亜紀の『金の仔牛』(講談社)なのであります。

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